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21話 

 温泉から上がってきた二人は許せないくらい近づいていて、私は無視するかのように浴衣を出す。

沖縄独特の柄であまり趣味がいいとは思えない逸品であった。 

けれどそんなことすらどうでも良くて、

私は通り過ぎる二人を視界に入れないことで精一杯だった。

 私は愛歌さんに声を掛けられてベランダに入ろうとした。 

だが、私は肩を叩かれてふと後ろを向いてみるとハヤテ君がいた。

「のぼせない程度に楽しんできてください。 僕もヒナギクさんとちゃんと入れるように

してきましたから。」

そう言うと私のもとからハル子のところへ行ってしまった。

「かいちょ~。 まだですか~?」

愛歌さんの声だ。 声のトーンは高かった。  察するあたり、かなり

機嫌が良い。 早く行ってあげないと可哀相なので、少し早足になった。

「今行く~!」

そして一歩目を進めようとした矢先ふと理沙が目に入った。

「ん? なんだヒナ。 私を見てもハヤ太君にはなれんぞ?」

「ちょ、ちが! って言うか何言ってるのよ。 別にそんなこと考えていないわよ!」

「では何を考えていたのだ?」

「何って、貴方、確かお風呂一人だったかなと思って。 

誘ったら一緒に入ってくれるのかなと思っただけよ。」

嘘偽りの無い言葉。 この温泉を独り占めにするのもいいだろうけど

やっぱり裸の付き合いこそが醍醐味なのではないかと思う。

考え直してみるとやはりそういう答えになった。

「お、誘ってくれるんだ。 う~ん。 でも

狭くないか?」

「何言ってるの。 大丈夫よ。 私たちの間じゃない。 

ちょっとくらい狭くたって平気よ。」

「ふ~ん。 そっか、じゃあお言葉に甘えて。」

そう言って理沙は服を取り出し脱衣所に一緒に向かった。

 服を脱ぐと私は真っ先にある部分を注目してしまった。

「何を見ているんだ。 私に何か付いているのか?」

付いている。 たわわと実った果物が。

「もしかして、理沙は脱いだらすごい人?」

無駄に大きな胸を見るなりそんな言葉しか出てこなかった。

「あっはっは。 なんだ。 そんなことか。

なに、ヒナだって人並みさ。 私は体には不自由していないが

それ以外はヒナに劣っている。 それが証拠にまだハヤ太君を落とせていない。」

コロコロと冗談を交えて私たちはタオルを巻き、ベランダに出るのだった。

 扉を開けると目を奪われるような絶景が広がっていた。 それこそ、遥か地平線の向こうまで

みえ、少し下がり始めた夕日は空と海の境界を消し、調和を取っていた。

「うわぁ、すごい…。」

ただ、呆然と望む絶景は私の思い出の中のひとつとなるだろう。

「ほう、東京ではなかなか見られない風景だな。」

理沙の瞳にもそれはしっかり納まっていた。

「さぁ、二人ともささっと体を洗って。 一緒に入るわよ。」

愛歌さんだ。 待ちくたびれたというかのように、いすに座っている。

クリームのようなシャンプーを泡立てたタオルを片手に呼んでいる。

「じゃあ、理沙座って。 背中流してあげる。」

椅子に座らせるとほのかに檜の香りがする桶を用意して私は理沙の背中を流した。

その際に気づいたのが、彼女は結構している肌理細かい。 そして、何よりも白い。

「ふ~ん。 しっかりとケアしてるのね。 すごくきれいな肌。」

「何、大したことは無いさ。 まぁ、ただ少しだけ好きな人の気を惹きたいだけ。

今のところ私になびいてはくれなさそうだけどな。」

理沙あ


「へぇ。 やっぱり朝風さんにもそういう人がいたんだ。

ねぇねぇ、だれなの?」

愛歌さんがいきなり喋りだすものだから私は間が悪くなってしまった。

それでも、私もそれについては興味があった。

「ん~。 内緒だ。 とてもじゃないが言えない。

言ったところで場の空気が白けるだけだからな。」

「いいじゃない。 そんなこと。 それともいつまでも指をくわえて

見ているだけでいいの? それで貴方、満足なの?」

私は親友のためと思い必死に後押しをしようとしていた。

ただ、それが良いのか悪いのかは私にはわからないけど。

「いや、良くは無いんだけど…。 けど、彼には既に付き合っている彼女がいるから、さ。」

歯切れが悪かったのはそのせいだったのだ。

こうなってしまうと話が別だ。 結局はそういうことで好きという気持ちが一方的にしか成立しない。

そんな話を聞くと確かにどうとも言えなくなってしまう。

「けど、そんなに簡単にあきらめていいものなの? 私なら絶対に

奪ってみせるけど。 そうやって自分の幸せを掴むの!」

押せるだけ背中を押す。 それが親友としての務め。

「だから、誰なの? 教えて。」

その人を如何にして惹き付けるか、それが謂わば問題だ。

「いいのか、ヒナ。 私は決して言いたくないんだ。

それでもなのか?」

切れが悪い。 そんなに言いづらい人なのだろうか。

「えぇ。 どうしても。 だって親友でしょ? 応援してあげないと。」

そういうと理沙は一度目をつぶって括ったらしい。

私の目をゆっくり見つめて…。

「私は、ヒナ、君の彼氏、ハヤ太君が好きなんだ。」

短い黒髪の少女が一人。 私の目の前で親友からなんだろう。

恋敵になった。 

「…そう。 そうだったんだ。 

あはは。 なんだ、そうなんだ。」

本当の強さってなんだろう。 黙したままでいれば良かった。

脆弱な心が悲鳴を上げている。 浮かぶのは彼女の瞳ばかり。

「いいか。 ヒナ。 私はヒナの一言で決めたんだからな。

ハヤ太君を奪ってみせる。 そして幸せを掴んでやる。」

決意した目にはしっかりと夕日が映えて、私もその中に溶け込んでいた。

「…そう。 なら私も受けて立とうじゃない。

私だってハヤテ君のことが好きなの! 絶対に渡さないんだから!!」

対抗意識を燃やし、見詰め合う。

けれど、決して喧嘩にならなかったりするのは、互いにどういう存在かが分かっているから。

好きな人が同じでも私たちの友情が揺らぐことは無い。

ただ、一緒の男の子が好き。 それだけ。

私たちのいずれ、若しくは他の人とハヤテ君が結ばれようとも、私たちは仲間だ。

心の中で整理の付いた私は、「じゃあ、背中、流そうか?」

軽く促し、理沙も同意した。 

その時見た空は既に哀の色をしていた。

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この記事へのコメント

Re: 21話

単純に知る前と知った後の
世界の変化を書くのは難しいよね。


感想書いた方がいいかなって思いまして。

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